CS向上のために必要なものとは?

香港ドルをインフレ格差に合わせて下げるか、ドルペッグ制を守り金利を上げて国内のインフレを抑えるかです。 結局、当局は後者を選んだわけですが、正しい選択だったと思います。
もしもその逆をやったら、国内のインフレはもっとひどくなり、そのことがさらに通貨を不安定にしかねなかったからです。 もう一方の台湾は、貿易黒字国です。
経常収支も黒字であり、台湾は資本輸出国なのです。 アジアというだけで、その資本輸出国まで売られるというのは、パニックに巻き込まれたようなものです。
ASEANはほとんどの国が経常赤字ですから、通貨が売られたとしてもしかたがありません。 けれども、経常黒字国で資本輸出国の台湾まで売られるのはおかしいのです。
唯一、香港と台湾の通貨を下げるもっともな理由があるとすれば、米ドルが強すぎるからです。 今世界で一番強い通貨は、ドルです。
そのドルとリンクしていたのでは、皆実効為替レートが上がってしまい、その分だけ競争力を失ってしまいます。 つまりこれは、香港ドル安というよりも、米ドル高なのです。

アジア通貨危機の報道で、よくタイ・バーツ史上最安値更新とか、ASEANのどこの通貨が史上最安値更新した、といった表現を目にします。 新聞記者からすれば、史上最安値更新と書くのはそれだけアイキャッチングになるからですが、皆対ドルで見た場合に史上最安値更新なのです。
でも対円で見たらどうでしょうか。 対マルクで見たらどうでしょうか。
こうして全体で見れば、決してすべてが史上最安値更新ではありません。 今ドルが目茶苦茶に強いだけなのです。
ドルが強いから結果として台湾の通貨が弱く見えるだけであって、いわゆる実効為替レートベースで見ると、つまり取引相手の国々の通貨を加重平均してみて本当に台湾の通貨が下がっているのかというと、実は下がっていないのです。 米ドルがあまりにも強いから、対米ドルで下がると史上最安値更新になるのですけれども、円で見れば違います。
いくつかの通貨は、今やっと円安のところに追いついたというところなのです。 だから最安値更新ということでパニックを起こすのは、ちょっと考えものでしょう。
最後に日本はどうかということになるのですが、私は今の日本の状況は、アジアの問題を抜きにしてもかなり深刻だと感じております。 本来とられるべき経済政策から一番遠ざかってしまい、一番これから冬乏の作業が必要なのは、ASEANでもなく、中国でもなく、実はこの日本なのです。
こうして日本が低迷していると、アジアはさらに悪くなってしまいます。 アジアの中でもっとも危機的なのは日本アジア、とりわけASEAN再生のカギを握るのも、日本です。
日本経済が立ち直り「日本売り」が止まって円高になれば、ASEANや韓国の問題はかなり楽になります。 ASEANを立ち直らせる最大の近道こそ、日本経済の復活と円高なのです。
それだけアジアでの日本の役割は大きいのです。 私だけの認識ではなく、アメリカ政府の認識でもあります。
「ファイナンシャル・タイムズ』を取っている方はご覧になったと思いますが、半年前にアメリカの財務副長官szがアジア通貨の暴落についてインタビューを受けています。 半分までアジアの話をした後、szは記者のアジア通貨への質問をさえぎるかのように、日本の話を始めます。

インタビューしたファイナンシャル・タイムズの記者は、なぜ自分たちの質問まで無視して、szが「日本の」「日本の」となぜ連発するのか分からずびっくりした様子が記事からもうかがえますが、szも日本にちゃんとしてもらわないと困ると考えているのです。 まったくそのとおりで、もしも「日本売り」が続き、円・ドルレートが一ドル一四○円や一五○円になるのなら、いくらASEANを支援しても無駄に終わる可能性があります。
しかも日本の問題が解決し、円が上がっていくときにASEANを支援すれば、少ない金額で大きな効果が期待できるからです。 最近は、あまりにも日本の政策が間違った方向へ向かうので、我慢できなくなったのか、早の財政再建に代表される日本の間違ったマクロ政府は、日本だけでなく、アジアの人たちにも大変大きな迷惑をもたらすことになってしまったのです。
今までアジア経済は、円高を前提にでき上がっていました。 そこに円安が生まれて問題が発生しています。
ある程度の円高是正ならともかく、「日本売り」と言われる今の円安一九九七年の終わりごろだったと思いますが、アジア通貨危機に対し、大蔵省の官僚が日本には十分アジアを支援していけるだけの余力があると言っておられました。 そのことを私があるアメリカの政府関係者と話したところ、彼はカンカンに怒って、日本にそんな財政的な余力があるのなら、日本の金融問題や景気対策に使うべきだと力説されていました。
にアジアの経済は耐えられなくなったのです。 今、日本がなんとかしなければならないのです。
今の日本で株価下落とともにややこしい問題を引き起こしているのが、円安という為替市場の問題であります。 前にもちょっと触れましたように、貸し渋りの重大な原因は円安にあります。
円安になったことで、日本の銀行が海外で持っているドル建て資産は円換算すると激増してしまいました。 その一方で、邦銀の自己資本は円建てですから、円安になったことで銀行の自己資本比率、つまり貸し出しなどの資産に対する銀行の自己資本が少なくなってしまいます。
今、日本の銀行はこの比率を一定以上にしておかなければならない義務があるので、円安で海外の資産が膨らんでしまいますと、彼らは内外で貸し出しを抑え、この比率を元に戻そうとするわけです。 これが銀行の貸し渋りなのです。

株安も貸し渋りの重大な要因ですが、円安も日本の金融システムを直撃しているのです。 この金融システム不安と貸し渋りが日本経済を直撃しているわけですから、今の日本当局にとって円安が好ましいはずがありません。
しかもこの貸し渋りは、日本国内だけではなく、アジア全体から、アメリカ、中近東にまで広がっております。 ということは、海外の金融当局者から見ても、この円安からくる信用収縮は無視できない問題になってきているのです。
今の日本の金融システムや米国の当局者が置かれている状況を理解していないのと、ドル高と円安は同じものだと勝手に解釈してしまっているところにあります。 話は、一九九五年の五月に戻ります。
あのとき一ドル八○円になって、日本はどうしようもなくなってしまいました。 偉そうなことを言っていた日本の大蔵省の皆さんも「これはどうしようもない。
一ドル八○円では何をやっても駄目だ。 アメリカにちょっと助けてもらうしかない」ということになりました。
そこで彼らは、アメリカの財務省に行ったのです。 そこで「何でもやるから助けてくれ」というお願いをしたのです。
こういうふうにつっぱねてよかったのですけれども、さすがに日本が助けてくれと言うのをむげに断われません。 そこでアメリカがつけた条件があります。

日本は財政によって本格的な内需拡大策をやることと、構造改革を進め対米貿易黒字の拡大を二度と許さないことです。 もしも約束してくれるのだったら、円高是正をアメリカ政府としてもお手伝いしましょうとやったのです。

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